ぼくは、しろあり。
やぁ!ぼくは、しろあり。
・・・・いやいや、はじめからそんなに嫌がらないでよ。
アリといっても、黒いアリの仲間ではなく、ゴキブリの親せき。
・・・・いやいやいや、さらに嫌がらないでよ。
お家を食べちゃうから、怖がられちゃうけど、ほんとは、とってもすごい虫!
どういうことかって?
きらわれても、怖がられても、
ぼくにはぼくの、
生まれてきた、【だいじな役目】があるんだよ。
ぼくたちは、本来、森に住んでいる。
そして、かれた木なんかをこまかくして、土に還していく仕事をしているよ。
つまり、森のお掃除屋さん。ぼくたちがいないと、困るんだ。
木の中に、コロニーという大きなお城をつくって、みんなで暮らしている。
そこには、ぼくらの女王さまがいて、たまごを生んでいる。毎日ね。
女王さまは、おしりからフェロモンという匂いをだして、
ぼくたちに「たまごはこっち」「おうちをつくってね」と伝えてくるよ。
はたらくアリ、兵隊アリ、そして王さまもいる。
王さまがいるなんて、いがいだったかい?
コロニーがせまくなると、仲間の一部は、いっせいに旅にでる。
イエシロアリだと、ムシムシしだす梅雨時がそのころ。
旅に出て、パートナーを見つける。
そして相手と場所が決まると、ポロンと羽が落ちる。
ここに住むって、決めたんだね。
それが、新しい王さまであり、女王さま。
ふたりは小さなコロニーをつくって、家族を増やしていく。
王さまも、女王さまも、十年以上、生きる。
ふつうのシロアリの4倍も長生きなんだよ。*1
まいにち、たくさんのたまごをうむのも、
実は、自然の中では、とても弱いからなんだ。
シロアリといっても、クロアリの仲間じゃないって言ったけど、
仲間どころか、ぼくたちはクロアリが怖い。
なぜなら、黒いアリは、ハチの親せき。
ぼくたちを食べてしまう【天敵】なんだ。
他に、クモや、ツバメなんかも、ぼくたちを食べてしまう。*2
食べられることが多いから、仲間をたくさん増やさないといけない。
それに、ぼくたちシロアリの皮膚はとても薄くて、
実はお日様の光や、乾燥もにがて。
だから、ジメジメ、日が当たらない所が好きなんだよ。
ぼくたちは、木や、木でできた紙を食べる。
森を離れた仲間が、人間のお家に行くこともある。*3
人間の家をこわすためじゃなくて、そこに「食べ物」があるから行く。
それでも、人間にとっては、家を壊す害虫になる。
たとえ、本当は、森の掃除屋だったにしても。
光がにがてなぼくらは、土や、庭に置かれた木や段ボールを通して、
蟻道という道をつくって、家に入っていく。
ジメジメ、暗いところが好きだから、
気に入ると、コロニーをつくる。
もし、キミの家の床がギシギシ、
柱がポコポコしていたら、空洞ができているかも。
そして、羽アリもみつけたら、注意して。
シロアリにそんなつもりはなくても、
家をこわされるのは、こまるよね。
そのために、できること。
シロアリが好きな、ジメジメ、暗い場所をなるべくつくらない。
家のまわりに、おいしそうな木や紙(段ボール)を置かない。
早めにみつけて、専門のひとに相談する。
人間にとって、都合がわるい虫は、害虫とよばれる。
シロアリにそんなつもりはなくてもね。
世界からシロアリがまったくいなくなれば、森がこまる。
森がこまれば、土がやせ、結局、人間もこまる。
だから、人間は、人間の家を守ろう。
シロアリにそんなつもりがなくても、
守ることが、まず、人間に「できること」なんだって知ってほしいな。
おしまい。
*1 シロアリの寿命
ふつうの働きアリや羽アリが2年くらい。女王は10年、王アリは何十年も生きると言われています。
100年以上生きるのでは?という研究結果もあるそう。
*2 シロアリの天敵
- ■クロアリ
- ■クモ(ハエトリグモ、アシダカグモ、ジョロウグモなど。羽アリが、巣に引っかかって食べられる。)
- ■トカゲ、ヤモリ、ヘビ
- ■ツバメ(春~夏のちょうど羽アリが飛ぶ時期に、空中でキャッチ。)
- ■カエル(ペット用にシロアリがエサとして売られていることも)
- ■モグラ(土中にいるところを、トンネルを掘って探して食べる)
- ■日光と乾燥(天敵じゃないけど、皮膚が薄く、すぐ水分が抜けるので。)
*3 シロアリはどうやって家に入ってくる?
- ■土の中から忍び寄る
・・・日本に多い「ヤマトシロアリ」や「イエシロアリ」は、地面の中に巣を作って、そこから木を探して移動。
家の下にあるコンクリートのすきまや基礎のヒビを見つけて、そこから床下に侵入してくる。
- ■蟻道(ぎどう)という土のトンネルを作る
・・・シロアリは、地面の上を歩くのが苦手だから、土や木くずでトンネルみたいな道「蟻道(ぎどう)」を作って移動する。
この道を使って、床下の木材や柱にたどりついて、こっそり食べ始める。 - ■家の中の"しずかな場所"が好き
・・・たとえば「押し入れの奥」や「使ってない掘りごたつ」みたいな、暗くてジメジメした場所はシロアリにとって天国。
そこに段ボールや本が置いてあると、「ごちそうだ〜!」と集まってくる - ■外に置いた木や丸太からも⁉
・・・庭に置いた木のオブジェや切り株にシロアリの巣があって、そこから家に入り込むこともある。つまり、(ヤマト・イエ)シロアリは土→床下→柱や壁の中っていうルートで、家の中を進んでくる。
カンザイシロアリという乾燥に強い個体もいる
- ■カンザイシロアリ?
・・・「カンザイ」とは「乾いた木」のこと。乾いた木を食べるシロアリ。
ふつうのシロアリ(ヤマトシロアリやイエシロアリ)は、じめじめした土の中や湿った木が好きだけど、カンザイシロアリはカラカラの木でも生きていける。 - ■どこにいる?
・・・カンザイシロアリは、家の中の柱や家具の中にこっそり住んでいる。しかも、土の中にトンネルを作らずに、木の中だけで生活するので、見つけるのがとってもむずかしい。 - ■見つけるヒントは「うんち」!
・・・このシロアリのうんちは、小さな砂つぶみたいな形をしていて、木のすき間からポロポロ出てくることがある。 - ■どうやってやってくる?
・・・春から夏にかけて、羽アリが飛んできて、、木のすき間に入りこんで巣をつくる。土や床下からではなく、上から来ることが多い。
羽アリが空を飛んで、家のすき間から入りこむ。たとえば、屋根のすき間や、壁のひび、窓のまわりの小さな穴から入ってくることがある。特に「アメリカカンザイシロアリ」という種類は、6月から9月の昼間に飛んでくることが多く、土に触れずに木の中だけで生活できるから、見つけにくい。
だから、床下だけじゃなくて、屋根の近くや2階の木材にも注意が必要。