薬にも毒にも

「おまえらなんか何の役にもたたん!」

「俺は、まともな職について、こうやって稼いでる!

おまえらなんかとレベルが違うんじゃ!」


そう、よく怒鳴る先生がいました。


ちょっとしたことで、もう怒りが抑えられず

叱るというよりは、罵倒になって、

あまりの大声と剣幕で

何が言いたいか、聞き取れない勢いでした。



・・・・・・ところで、脳が主語が分からないというのをご存知ですか?



私も数年前に知ったのですが、

脳って話の中に出てくる主語がわからないらしいのです。



だから、人を【悪く】を言うと

脳は、【自分が悪く】言われているのと同じ状態になるというのです。



悪口をいうと、スッキリした気になるような感覚は、実は興奮しているだけ。

興奮が冷めると、また嫌な気持ちになって、結局怒りが収まらない。



だって、脳は、今言った悪口を、自分の事として受け取っているから。



だから、冒頭の「役に立たん!」と怒鳴る先生は、

結局自分が「役に立たん!」と言われているのと同じ状態に脳がなっているので

そう怒鳴った後、自分がいかに社会で役に立っているか

フォローしないといられないのです。

「おまえは、役に立たん!」と、【自分が】言われたと脳が受け取ったので

そんなことない!と言わないとつらいですもんね。



その先生にとっては、指導のつもりでも、あまりにもきつすぎる言い方は

他人にとっても、自分にとっても

実は、毒にしかならないということです。



毒をもられて、やる気も元気もでませんもんね。


暴言や悪口を言うのは、アドレナリンがでて興奮してるだけ。

それでは、リラックスも安心感も得られないので、

【幸せな気持ち】にはいつまでたっても、なれないというわけです。



反対に、人に優しい言葉をかけたりすると

同じく脳は主語がわかりませんから、自分が言われたと同じように反応します。



「大丈夫だよ」、「ありがとう」



こんな言葉を言うと、自分までほんわかした気持ちになるのは

脳が、そう【自分にも言われた】と受け取るから。

だから、こちらが言ったのに

安心したり、しあわせな気持ちになるのです。



そういえば、わが家にはお姫様がいます。

セキセイインコのQ太郎(♀)です。

Q太郎

犬猫みたいに、特に何の役に立つわけではありません。



でも、一日に何度も、私たち家族に

「Q太郎さん、かわいいね~!」と言われています。

とりあえず、「かわいい」のが仕事ですから。



でも、脳の仕組みを考えると、私たちはQ太郎に一日に何度も

「かわいいね~」と言いながら

脳は、自分が「かわいいね~」と言われたのと同じ状態になっているので

そう声をかければかけるほど

幸せな気持ちになっているということ。



Q太郎


う~ん。「かわいいが仕事」、恐るべし!





そういえば、子ども達の「うざい」「きもい」。


正直、好きな言葉ではありません。

聞くだけでつらい。

自分に全く関わりなくても。


ただ、子ども達は、聞いたこともない言葉は覚えないのだから

それは、誰かに「言われた」か「聞いた」から

「言う」のでしょう。



誰かを「あいつ、うざくね?」「あいつ、きもいっちゃ」と言いながら

自分で毒を飲んでるようなものです。

だって、自分の事と脳は受け取っているのだから。

だから、前述の先生ではありませんが、自分の優位を証明しないといけない。

悪くいえば言うほど。だから、悪口が止まらなくなる。

一緒に、毒を飲んで、苦しいから。



怖いのは、

悪口を言われたその子はもちろん、言った本人も、

なぜか周りにいただけの子も、

同じ毒を飲んでいるということ。


例え、その「きもい」を傍観して聞いていて、

自分がそう言われたわけでなくても

脳は【自分が言われた】と同じ状態になっている。



例え、当事者じゃなくても

その場にいたみんなが、その悪口を聞いて

脳が傷ついている。



大人が、それに気づかないと。



こちらの思い通りに動かすことが、

【指導】なのか私にはわかりません。

どうやったら、良い方向に導いていけるのかも分かりません。



ただ、言い方だけは考えねば

他人にとっても、自分にとっても

薬どころか、毒にしかならないということです。

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