音と感覚

たまたまテレビを点けたら、聴覚障害のある

左官職人さんの番組をやっていました。



北海道釧路市で、一人前の左官職人を目指し修行中。

耳が聞こえないということで不採用が続き、

聾学校時代の先輩に誘われ、

ようやく決まった左官職人の仕事。



戸惑いながら、怒られながら

先輩の指導のもと、ひたむきに取り組む姿がありました。



猛練習の末、ようやく個人宅の和室の壁を塗ることに。



シャッ、・・・シャッ。

その鏝の音に、社長が「・・・(漆喰が)薄いな。」と言います。

「聴者なら音でわかるんだけど・・・」

そういって、《もっと あつくぬれ》と筆談して指示します。

「そうそうそう・・・」社長が満足そうに言います。



私は左官職人でもありませんし、ろう者でもありませんが、

シャッという音が聞こえなくても、

塗っては注意され、塗っては注意されるうちに、

きっと手の感触が、覚えていくのかなぁと思いながら見ていました。



これぐらいの手ごたえ、感触、そうすると上手くいくことを

職人さんは、体で、五感で覚えていくのかもしれません。



失敗しながらも、ひたむきに鏝を走らせる姿を見ていて

もくせい工舎の家の壁を手掛ける、原田の親方の言葉を思い出しました。



と言っても、永家Tさんから聞いた話で

以前もブログに書いたことがあるんですが・・・。



職人は、不器用な方がいい。

器用だと、小手先だけで仕事をする。

不器用で、怒られて、悩んで悩んで、何とかしてきた手の方が

味のある、いい仕事をするのだそう。



それを聞いて、何だか嬉しくて

少しだけ、元気が出るような気持になりました。



悩んで悩んで、それでも手を止めなかった。

そのひたむきさが、あの職人さんの味わいに

いつかなりますように。