肉子ちゃん

大分・自然素材の家。もくせい工舎・ことりのかあさん


「今度、アニメ化されて映画になるよね?」と本好きの友だちに言われ、

「いや~、原作好きすぎて、あんまり見る気にならんのよ~」
そう答えていた私。

タイトルの"肉子ちゃん"と聞いて
すぐピンとくる方、こない方いらっしゃると思います。

そう。その好きすぎる原作とは
西加奈子さんの『漁港の肉子ちゃん』

文庫本の表紙が、クリムトのような
女性の裸の絵が載っているので
本を貸した友人は
子どもにギョッとされたらしいです。

ちょっと表紙はセクシーですが、
中身は西加奈子さんらしい
痛快さやテンポの良さ。

すごく笑えるのに、泣ける。
今のところ
私の一番好きな小説です。

主人公は、小学5年生の女の子・キクりん。
男にだまされてばかりの母、肉子ちゃんと
流れ着いた北の漁港に暮らしています。

太っていて不細工で、
とてつもなく明るい肉子ちゃん。

ちゃんとしてなきゃ。
他人に迷惑をかけないようにしなきゃ。

年頃になってそう意識しはじめたキクりんには
そんなお母さんがこの頃ちょっと恥ずかしい。

でも、本当は
「ちゃんとした」大人なんていないし、
「他人に迷惑をかけたことない」大人なんていない。

先般、荻上直子監督の『川っぺりムコリッタ』という映画について
書かせていただきました

西加奈子さんの本も
それぞれが「問題(のようなもの)」を抱えながらも
それが一向に解決していないのに

最後は、晴れ晴れとした気持ちになる。

そんな作品が多く、
肉子ちゃんも最後はとても温かい気持ちで
読了します。

私は特に、キクりんが入院した時の
サッサン(肉子ちゃんのバイト先の焼き肉屋の主人)とキクりんのやり取りや

キクりんが、肉子ちゃんに告げる言葉が
何回読んでも泣けてしかたがないのです。

しかも嬉し泣きで。

サッサンが言ってくれた言葉の温かさ。

キクりんの肉子ちゃんに対する思いは

何やかんや色々あっても
それでも「大好き!」そのもの。

生まれてきて
この世に存在していることに

何の条件もなく
OKを出されていること。

そのうれしさに、こちらまで温かくなるのです。

だから、アニメ化されて
見てガッカリしたくない。

・・・が、冒頭の言葉だったのです。

ところがですね、
これがしてやられました。

Amazonのプライムビデオで追加料金なしだったので
先日試しに見て、

本と同じところで
うかつにも泣いてしまった。

サッサンが、もうピッタリ。

肉子ちゃんも出だしこそ、ちょっと違和感ありましたが
それを打ち消して感情移入させるのは
さすがの(肉子ちゃん役)大竹しのぶさんです。

小学校高学年の女子の「グループ」のめんどくささや
キクりんの気持ちの描き方も秀逸。

絵もとてもきれいで

あれだけ嫌がっていたのに
実際にふたりが暮らしていたのはこんな町なんじゃないかと
素直に思ってしまう。

まいったな~。
「あれ、映画みたら、なかなか良かったんよ」
そう友達に謝らないといかん。

年末の忙しい時に、映画の話かよ?
と怒られそうですが
コロナ禍だからこそ、
年末年始は、家でゆっくり映画もいかがでしょう?

Amazonプライム会員の方は、今のところ
追加料金なしの「見放題」のようなので、ぜひ。


いやはや、
毎年のことですが
追い出されるように年末を迎え、
2022年も明日で終わりです。

ウクライナ侵攻など、つらいことも
残念ながらまだ続いています。

その人の価値というのは
何を成し遂げたとか
記録や数字に残るだけのものではなく

居なくなった後の寂しさにあるのじゃないかと思います。

かけがえない誰かと
かけがえない時間を
かけがえない場所で

みんなが温かく過ごせますように。

みんなが、存在にOKを貰えますように。

そう祈るばかりです。

今年もお付き合いいただき
ありがとうございました。

どうか良いお年をおむかえくださいませ。

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