田舎暮らしも寝て待て
お施主様の中にも、自然豊かな環境を好まれる方が多いもくせい工舎。
かく言うわが家も、青々した場所が好きで、
視界のほとんどが、空か緑といった場所に居をかまえました。
住んで、軽く十年。アパート暮らしの年月を超えました。
何とか無事にやっております。
今日は、そんな【田舎暮らし】のお話。
空が広~い!電線がな~い!
風景だけに惹かれて、縁も所縁もない場所に住むことにした私たち。
子供会や祭り事などの【頭数】としては、歓迎されましたが、
最初は【The よそ者】でした。
どこかの娘さんでも、誰々の息子でもない。
どこの馬の骨とも分からない。
警戒されて当たり前なのです。
最初はやたらと世話を受けます。
たぶん、探りをいれられたんだと思います。
ところが、私はあんまり可愛げのないタイプで、
口先だけでも愛想よくしておけばいいのに、上手くできない。
畑に化成肥料や、ビニールマルチを使えとアドバイスしてくれているのに、
ついつい「いや、それやりたくない。」が、顔に出る。
そのうち、「もう二度と親切にしてやらん!」となるわけです。
無駄なく、効率よく収穫できる畑は素晴らしいのですが、私がやりたいのは、「こうやったらどうなるか?」の実験的な畑に近い。
なるべく、肥料や資材を買ったりせず、ぐるぐる循環できる感じで、気楽にやりたかったのです。
村一番の有力者(?)に目をつけられると、
田舎は名字が違っても、親戚同士も多いし、妙な力関係もあって、
かなり風当たりが強くなったりします。
じゃ、それはずっと続くのか?
そうでもありませんでした。
10年かかりましたが、「ちょっと変わっているけれど、何か頼めばマジメにやる人間」くらいには認識してもらえる。
何かあったり、どう思われるかは、コントロールできませんが、
それに対する態度は、自分で決められる。(とはいえ、結構がまんもした。ローンがあるし。)
100%完璧な対応も、100%へいこらの迎合もできませんが、
60点を目指しつつ、欠点は取らないようにしてきたつもりです。
【悠々自適に、憧れの田舎暮らし】
私も、そんな【のんびり】暮らす一面ばかりを見ていました。
ところが、美しい景観を維持しようと思えば、
3か月に一度は、交代で地区の掃除や草刈りをせねばなりません。
【悠々自適】に暮らすために来たんだから、
「地区のことや、近所づきあいなんて、面倒に関わりたくない」
その気持ちも、分からなくもない。
ただ、70代、80代の《おいちゃん》たちが、河原の土手の足場の悪い所で、
汗水たらして草刈りしているのも知らず、
なにかと理由をつけては、任せっきりなのを見ると、
そりゃ、【イイとこ取りだけ】は、あんまりだよなぁと思うのです。
だから、最初の探りにしろ、「今度来たやつはどんな感じか?」も分からんでもない。
口先だけか、否かを確かめる必要があるからです。
ちなみに、他人があまり好まない仕事を、率先してやりました。
公民館のトイレ掃除とか、小さな会計の役目とか。
トイレ掃除は、ひとりで黙々とできるから。(話をせんですむし)
会計は、なかなか決まらないのが嫌だったから。(はよ、帰りたいし)
どちらも気に入られるためではありません。
でも、そういったことを通して、マジメに取り組もうとしているのは伝わる。
イヤな仕事を無理に引き受けることはありませんが、
自分にできることは、極力協力する。
目指すは60点で。
最初、なかなか馴染めなくても、時間が解決してくれます。
心配いりません。
どんな人付き合いも、100点取ろうとするから、しんどくなる。
半分もできれば、上出来です。
・・・などなど、ちょっと先輩風を吹かしてみました。
その先輩風の吹き返し(?)的に、意外だったことをオマケとしてまとめてみました。
【田舎暮らしの思いがけない?デメリット】
虫が多い。動物も来る。
いきなりの野焼きで洗濯物が、臭くなる。(田んぼは消毒もあるのでは?)
名字が違っても、親戚同士が多い。(うっかりしたことが言えない。)
なんらかの力関係がある。
夏場は雑草に振り回される。
学校の人数によっては、PTAがらみの【役】がすぐ回ってくる。
【田舎暮らしの思いがけない?メリット】
鳥や虫の名前に詳しくなる。
あらかたの虫が平気になる。(人によるのでは?)
朝日夕日の美しさを満喫できる。
水が美味しい。
基本静かなので、日中、バッタの羽音にすら気づく。
踏ん張っていると、それなりに根を張れる。
PTAも、顔見知りばかりで、お互い様感が出てくる(?)
(転校先のPTA総会に、ほとんどの保護者が参加していて驚きました。前の学校は4倍の人数いたのに、先生が声をかけまくって、同じくらいの参加者だったので。「多いと、帰っても分からんだろう」ってなるのかもしれません。田舎じゃ「なんでおらんかったん?」ですけど。)
総じて、結果。
田舎万歳、です。
自分たちで家を建てることのメリットの一つは、「ここに住みたい!」が叶いやすいこと。
根を下ろす場所を選べるということです。
風が吹き、吹き飛ばされそうになる度に、
きっと、その根が強くなる。
根が延びた先の土には、花瓶の水だけじゃありえない、たくさんの繋がり、関りがあります。
とはいえ、時間が解決してくれる面もあるものの、枯れてしまってはお終いです。
その点、人間だからのメリットは、
命にかかわりそうなときは、根ごと移動できること。
これから、土地を探される皆様。
アタマで考えすぎると、どうして良いか分からなくなるかもしれません。
そんな時こそ、腑が動くというか、惹かれる感覚も、大事です。
この場所にいると、イキイキしてくる、嬉しくなる感覚です。
色々あっても、土地から受ける感覚は、やっぱり大きいと思います。
土地にも、家にも、どうぞ良いご縁がありますように。